第16回「絵本テキスト大賞」
入選発表

日本児童文学者協会と童心社は、昨年に引き続き「第16回絵本テキスト大賞」の作品募集をいたしました。応募総数は1088編(Aグレード 468編、Bグレード 620編)でした。たくさんのご応募をありがとうございました。応募作品は7月から8月末にかけて1次選考を行いました。1次選考通過作品としてAグレード28編、Bグレード37編を選びました。
10月6日、童心社にて2次通過作品を選び、そこから最終選考に向けて議論いたしました。

最終選考に残った作品は、
Aグレード「こんなくるまいかがですか」(根木美沙枝)、「カモメの町」(さのみずほ)、「かがみのかがみ」(はらだみなこ)の3編でした。
Bグレードは「ハルおばあさんのひみつのたなだ」(土筆あさ)、「ゆびさきトントン」(鬼頭瑞希)、「どっかーさん」(稲葉友樹)の3編でした。

毎回議論に上がるのが、AグレードとBグレードのグレードを意識せずに書いている作品が多いということです。絵本の文体について、言葉選びが考慮されていない作品が多く、子どもたちにどう語りかけるかという視点をもっと深めていただけたらと思います。一方、発想は面白いがそこに寄りかかるだけではなくその発想を生かすためには、日常をしっかり描き、その上でのファンタジックな出来事になるのではないかという議論もされました。とにかく絵本をもっとたくさん読んで、そこから絵本の作り方を学んでいただけたらと思いました。
議論の結果、最優秀賞は今回は残念ながら見送りとなりました。

グレード 受賞作品
優秀賞
「こんなくるまいかがですか」(根木美沙枝)
優秀賞
「ハルおばあさんのひみつのたなだ」(土筆あさ)

A 、Bグレード共に、優秀賞一点ずつでした。
Aグレード優秀賞の「こんなくるまいかがですか」は、ナンセンス的持ち味の作品で、発想も面白い。車好きの子に興味を持たれそう。だが作品としてまとまりきれていませんでした。またBグレード優秀賞の「ハルおばあさんのひみつのたなだ」は、昔話的でシュール。樽の中のたなだという作りは面白かったのですがもっと子どもたちに語りかける言葉を意識して欲しいと思いました。この賞は未来へ向けて、新人作家の登竜門として書き手を応援しています。なお一層、絵本も言葉にこだわり絵本そのものをもっと学んでいただけたらと思いました。
次回もご応募くださいますよう、選考委員一同、新しい書き手の誕生を心待ちにしております。

●主催 日本児童文学者協会/童心社
第16回「絵本テキスト大賞」選考委員
内田麟太郎、加藤純子、浜田桂子、橋口英二郎(童心社取締役 編集長)

第15回絵本テキスト大賞 
入選発表

日本児童文学者協会と童心社は、昨年に引き続き「第15回絵本テキスト大賞」の作品募集をいたしました。応募総数は総数1238編(Aグレード547編・Bグレード691編)でした。たくさんのご応募をありがとうございました。
応募作品は7月から8月末にかけて1次選考を行いました。
1次選考通過作品としてAグレード23編。Bグレード26編を選びました。
9月26日、童心社にて2次通過作品を選び、そこから最終選考に向けて議論いたしました。最終選考に残った作品は、Aグレード「よるとてをつなぐ」(森川かりん)、「かえりみち」(市原まりこ)、「いなくなるってどういうこと?」(山下雅洋)の3編でした。
Bグレードは「ぼく しってるで」(さくらふく)、「まあちゃんと、せかい一ながいねっこ」(福原道人)、「ところがどっこい、カッパッパ」(まちはらめえり)、「くさむら ゆうびんきょく」(いしはらゆりこ)の4編でした。
1編1編議論していった結果、以下の作品の受賞が決まりました。

グレード 受賞作品
大賞
「くさむら ゆうびんきょく」(いしはらゆりこ)

作品紹介

ちいさな池のそばの草むらに、むしたちが出入りするゆうびんきょくがありました。
そこでは、むしたちがいそがしそうに、はたらいています。
「かっこいいなあ。ぼくも やくにたつ しごとが してみたいなあ」
かたつむりのでんでんは、ゆうびんきょくにむかいました。

受賞のことば

「絵本テキスト大賞」の受賞を受け、とても感激しております!
選考して頂き、ありがとうございました。
この数年間は、絵に個性が出せず悩んでいましたが、こうしてお話づくりで評価されたことは、私の人生において新しい扉が開かれたようです。
まだまだ、絵本作家としては歩み始めたばかりですが、これからも楽しく共感できる物語を作っていきたいです。

いしはらゆりこ

いしはらゆりこ
グレード 受賞作品
優秀賞
「よるとてをつなぐ」(森川かりん)

作品紹介

「ひとりで ねるの、こわいよう」
たっくんのまっくらな部屋に、ニョキッと「よる」があらわれました。
よるは、心配ごとをやさしく聞き、すてきなアドバイスをくれます。
そして、よると手をつないだたっくんは……。
よるが形になってあらわれるという斬新な切り口で、タイトルから想像をかきたてられます。

受賞のことば

優秀賞をいただき、心から嬉しく思っております。
今回の作品は、幼い頃母に読んでもらった素敵な絵本たちの空気感や温もりを思い出しながら、おもむくままに書きました。
私も、世代を超えて読み継いでもらえる絵本を生み出せるよう、成長していきたいです。

森川かりん

森川かりん

大賞を受賞した「くさむら ゆうびんきょく」は、まず、くさむらゆうびんきょくという発想が面白い。また出てくるいろいろな生き物たちが、それぞれの役目を果たし、楽しいテキストになっているという評価でした。優秀賞の「よるとてをつなぐ」は、夜と手を繋ぐという言葉や発想の見事さが評価されました。しかし人格を持った夜が発する言葉には凡庸で常識的すぎるものも多いということで、惜しくも優秀賞に終わりました。応募作品全体を見渡すと、枚数オーバーのもの、絵本なのにおとなが対象だったりと、戸惑うような原稿が少なからずありました。応募要項をきちんをお読みくださり、ご応募ください。
また第13回絵本テキスト大賞を受賞した『まいごのモリーとわにのかばん』(こまつのぶひさ文・はたこうしろう絵)は発売早々増刷になり、すでにモリーの2巻目も出ています。新しい才能を、ぜひこの場から発見していきたいと思っています。次回もご応募くださいますよう、選考委員一同、新しい書き手の誕生を心待ちにしております。

●主催 日本児童文学者協会/童心社
第15回「絵本テキスト大賞」選考委員
内田麟太郎、加藤純子、浜田桂子、大熊悟(童心社編集長)

第14回絵本テキスト大賞 
入選発表

日本児童文学者協会と童心社は、昨年に引き続き「第14回絵本テキスト大賞」の作品募集をいたしました。応募総数は昨年より160編多い、1508編(Aグレード715編・Bグレード793編)でした。たくさんのご応募をありがとうございました。応募作品は7月から8月末にかけて1次選考を行い、1次選考通過作品としてAグレード26編。Bグレード29編を選びました。9月27日、新型コロナウイルスの影響で初めてリモートでの選考会議を行いました。まずは2次通過作品を選び、そこから最終選考に向けて議論いたしました。最終選考に残ったのは、Aグレード4編、Bグレード6編です。通過作品は下の通りです。

Aグレード「おおきなてのまぁむ」(しみずあい)、「かゆくても。」(たけのぶさやか)、「ありえないあり」(いちかわたかこ)、「おすもうさんのかくれんぼう」(根木美沙枝)。Bグレード「のびちゃうから 食べなさい」(にいまゆこ)、「さやちゃんのおじいちゃん」(山﨑ひろ)、「チャンチャラ・パンパラ、うそつきばな」(たに かおり)、「あらいぐまの せんたくやさんと くいしんぼう せんたくき」(木下恵美)、「ルドルフのくつや」(もちだなふみ)、「おきなさい」(古川泰)

ここから議論の結果、今回は残念ながら大賞はなしで、Bグレードから2編の優秀賞が決まりました。

グレード 受賞作品
優秀賞
「のびちゃうから 食べなさい」(にいまゆこ)

作品紹介

「ラーメン、のびちゃうよ。はやく食べなさい」といわれた、たっくん。
──ラーメンて、のびるんだ。いったいどこまでのびるかな。あやとりなんて、できるかな。なわとびはどうだろう。さかなつりに、バンジージャンプ……
ユーモラスな空想がどんどん広がっていく、絵が見たくなってくる楽しい作品です。

受賞のことば

このような素晴らしい賞を頂き、大変嬉しく思います! ありがとうございます。
このお話は、ラーメンを食べるのが遅くて、「のびちゃうよ!」と指摘された息子が「のびたらどうなるの?」ときいてきたことで、ひらめきました!
子どもたちの元に心踊る絵本を届けられるよう、今後も創作活動に励んで参ります!!

にいまゆこ

にいまゆこ
グレード 受賞作品
優秀賞
「あらいぐまの せんたくやさんと くいしんぼう せんたくき」(木下恵美)

作品紹介

小川のほとりの小屋にひっこしてきた、あらいぐまさん。小屋にはせんたくきがあったので、せんたくやさんをはじめたら、お客さんで大にぎわい。
ところがこのせんたくき、とんでもないくいしんぼうで、せんたくのとちゅうでチョコレートを食べたり、たっぷりケチャップのスパゲッティを食べたり……
お話の展開が楽しく、なによりせんたくきのキャラクターが魅力的な作品です。

受賞のことば

このたびは優秀賞に選んで頂き、ありがとうございます。創作活動をするうえで大変励みになりました。
心にのこる物語をつくれるよう、ストーリー展開などをこれからも勉強していきたいと思います。

木下恵美

木下恵美

今回は絵本を意識した面白いアイディアに溢れた作品が多かったです。しかしアイディアだけではなく文章を磨くことも大切です。優秀賞を受賞された作品は出版できるレベルに近い安定感を持っていました。これからにつながっていくことを期待しています。またもっと子どもを見て欲しい、単にお化けだとか、妖怪だとか、宇宙だとか、ウンチだとかそうした安易な発想に飛びつかず、子どもの思いをもっと深めて欲しいと言う意見もありました。また面白いアイディアに感心しつつも、無茶苦茶な楽しい展開の中に読み終わったときエナジーを感じる部分も大切と言う意見もありました。特筆すべきは、この2次選考通過作品の作者は、期せずして30代、40代の若い世代の方が多かったと言うことです。若い書き手たちが絵本に向かい始めたと言うことはこれからの児童書の世界がさらに広がっていく期待感があります。びっくりするような面白いアイディアをどう文章で表現していくか。子どもたちと共有できるか。そのあたりをもう一踏ん張り努力していただければと思います。
次回15回目のご応募も楽しみにお待ちいたします。

●主催 日本児童文学者協会/童心社
第14回「絵本テキスト大賞」選考委員
内田麟太郎、加藤純子、浜田桂子、大熊悟(童心社編集長)

第13回絵本テキスト大賞 
入選発表

日本児童文学者協会と童心社は、昨年に引き続き「第13回絵本テキスト大賞」の作品募集をいたしました。応募総数は昨年より若干多く、1343編(Aグレード632編・Bグレード711編)でした。たくさんのご応募をありがとうございました。応募作品は7月から8月末にかけて1次選考を行い、1次選考通過作品としてAグレード26編。Bグレード35編を選びました。9月23日、童心社にて2次通過作品を選び、そこから最終選考に向けて議論いたしました。最終選考に残ったのは、Aグレードは「おばけちゃんのてがみ」(奥田実紀)、「てで、まるをつくったら」(こばやしひろみ)、「わすれんぼう」(古川泰)、「おふとんのまほう」(小松申尚)、「ロボットかあちゃん」(もりみか)の5編でした。

Bグレードは「ゆめくま」(丸家さとこ)、「ひつじのモリーとわにのかばん」(小松申尚)、「さみしいガイコツ」(斉藤誠)、「さくらピアノ」(菊井知子)、「ヘジラのへーちゃん」(おち・亜衣)、「くるくる るりちゃん」(まきうちれいみ)の6編でした。

1作1作議論して行った結果、今年は満場一致で絵本テキスト大賞が決まりました。

グレード 受賞作品
大賞
「ひつじのモリーとわにのかばん」小松申尚

作品紹介

ひつじのモリーは、おでかけするのがだいすきです。森でも海でも沼地でも、ひとりでおでかけできるのでした。……ただ、だいたいまいごになるのです。
でも、しんぱいいりません。なぜなら……

モリーの姿は、幼い子どもそのもの。ヴァイタリティに溢れ、ユーモラスで楽しい作品です。
絵本になるのをどうかご期待ください。

受賞のことば

絵本テキスト大賞の受賞、心からうれしく思っています。新しい物語の扉をどんどん開いていけるように、努力を惜しまずチャレンジしていきたいと思います。乞うご期待!

小松申尚(こまつのぶひさ)

小松申尚

小松申尚さんは、Aグレードでも最終に残り、これは満場一致にはならず、Bグレードでの大賞受賞となりました。とにかく絵本的センスがあり、書ける人ということで意見が一致しました。大賞は、いずれ童心社から絵本として出版されます。

また、Aグレード、Bグレード共に、優秀賞はありませんでした。

応募作品の多くは、絵本テキストといえるのだろうか。あるいは絵本テキスト的に描いていても、ストーリー性が弱く展開に工夫がなく凡庸である。なぜこのような作品になってしまうのかということについて、選考委員会で長い議論を行いました。話の中心は「絵本について」です。ご応募くださった皆さんは、ほんとうに絵本をたくさん読んで勉強しているのか。絵本テキストを書くには最低でも10冊の絵本を読んで、「絵本とは」ということについて考えてほしいということが議論の中心でした。絵本は、画家さんとの共同作業です。場面の展開や、イメージをしっかり頭に浮かべながら書いているのか。以前も議論に出て書きましたが、絵本のダミーを作ってみてください。そしてページをめくりながら声に出して読んでみる。こうした作業をやりながら考えてみてください。今年は特に絵本テキストというより幼年童話のように長い作品が目につきました。絵本とは、文と絵が一体となって作品をつくりだすものです。そうした絵本の基本的な考え方を見直し、第14回もまたご応募くださいますよう、選考委員会一同、新しい書き手の誕生を心待ちにしております。

●主催 日本児童文学者協会/童心社
第13回「絵本テキスト大賞」選考委員
内田麟太郎、加藤純子、浜田桂子、大熊悟(童心社編集長)

第12回絵本テキスト大賞 
入選発表

日本児童文学者協会と童心社は、昨年に引き続き「第12回絵本テキスト大賞」の作品募集をいたしました。応募総数は1245編(Aグレード576編・Bグレード669編)でした。たくさんのご応募をありがとうございました。応募作品は7月から8月末にかけて1次選考を行い、1次選考通過作品としてAグレード18編。Bグレード19編を選びました。9月26日、童心社にて2次通過作品を選び、そこから最終選考に向けて議論いたしました。最終選考に残ったのは、Aグレードは「げんこつごたつ ぽっかぽか」(ししどなな)「かあちゃんの スマホになっちゃった!」(くればやしえみ)「ぺんぎんに、おやつ」(三野誠子)「ママだって、おたんじょうび」(高木木綿子)「みつをおじさんはかわってる」(Zin)「わたし、おばあさん」(カナガワマイコ)の6編でした。またBグレードは「いちばんとおいみち」(山本敬史)「ねこのふどうさんやさん」(よしやまけいこ)「コンビニゆうれい」(えばたえり)「ネコ事務」(宮川優子)「ニンニク忍者ニンニン」(日高あゆみ)の5編でした。議論の結果、今回はAグレード、Bグレード共に大賞はなしと決まりました。優秀賞についてはそれぞれ2編ずつが決まりました。

グレード 受賞作品
優秀賞
「みつをおじさんはかわってる」Zin
「わたし、おばあさん」カナガワマイコ
優秀賞
「ねこのふどうさんやさん」よしやまけいこ
「ニンニク忍者ニンニン」日高あゆみ

優秀賞を受賞した作品は、それぞれ面白い着眼点で絵本世界を作ろうとしていました。選考会議では今年は大賞を出したいという意欲で全員が臨みましたが、優秀賞に選ばれた作品はいずれも1冊の絵本にするにはもう一歩、何か足りないところがありました。「しかし今後の改稿次第では出版に繋がる作品もあるだろうと考えている」という出版社からの言葉もありました。今回からAグレード1編、Bグレード1編と応募に条件をつけましたが、それでも1245編のご応募。皆さんの絵本テキストにかける想いの強さを感じました。選考の議論の中では、昨年同様、グレードを勘違いしているのでは(Aは2~3歳向け・Bは5~6歳から小学校低学年)という応募が多数見受けられました。また今年も意見として出たのは絵本の特性である「ページをめくる」ということへのドキドキ感やリズム感が弱い、読者に伝わるように書いているか、絵本の文章になっていない、小学校中学年向けの作品を書いているように書いている、絵本の文は耳で聞くもの。提出する前に必ず音読してほしい、などの意見や、出版社からは、優れた絵本テキストを求めるコンクールではあるものの、才能発掘ということでは幼年童話の書き手の登場も期待しているなどの言葉もありました。大賞が出なかったのは残念ですが、絵本テキストを書きたい人たちがこんなたくさんいることに励まされます。来年もまたすっかり定着した絵本作家の登竜門であるこの「絵本テキスト大賞」に応募することの意味を考えていただき、ぜひご応募ください。他の誰にも書けない発想を生み出す。そうした意気込みで臨んでいただきたいと願っております。第13回も新しい発想の作品をお待ちしております。

●主催 日本児童文学者協会/童心社
第12回「絵本テキスト大賞」選考委員
内田麟太郎、加藤純子、浜田桂子、大熊悟(童心社編集長)

第11回絵本テキスト大賞 
入選発表

日本児童文学者協会と童心社は、昨年に引き続き「第11回絵本テキスト大賞」の作品募集をいたしました。応募総数は昨年より683編増え1758編(Aグレード847編・Bグレード911編)でした。たくさんのご応募をありがとうございました。応募作品は7月から9月末にかけて1次選考を行い、1次選考通過作品として、Aグレード19編。Bグレード26編を選びました。11月2日、童心社にて2次通過作品を選び、そこから最終選考に向けて議論いたしました。最終選考に残ったのは、Aグレードは「トイレゆうえんち」(おがわみかこ)「おかのうえのトランポリン」(阿知波周生)「わたしおしえてあげたんだ」(小林夏久)「タイトルなし」(たまきあみ)「しろのえほん」(丸目花)の5編でした。またBグレードは「かえりみち」(花うさぎ)「おおかみはチキンが食べたい」(岩崎玉恵)「おべんとうばこ」(西田伸昌)「食いしん坊な蚊」(早乙女純章)の4編でした。議論の結果、今回はAグレード、Bグレード共に大賞はなしと決まりました。優秀賞についてはそれぞれ1編ずつが決まりました。

グレード 受賞作品
優秀賞
「しろのえほん」 丸目花
優秀賞
「おべんとうばこ」 西田伸昌

Aグレードの優秀賞を受賞した「しろのえほん」は白に着想したセンスは面白い。しかし作品として絵が見えていない。
Bグレードの優秀賞を受賞した「おべんとうばこ」は書き慣れた印象の作品ではあるが、おべんとうばこの蓋をした時どういうイメージになるのか。その辺りがよく見えてこない。 以上が総評です。

今回は1758編とこれまでにない応募総数でした。けれど総じてレベルが低かったという厳しい意見が飛び交いました。なぜそうなったかについての議論も行いました。まず絵本の特性である「ページをめくる」ということへのドキドキ感やリズム感が弱い。読者に伝わるように書いているか。読者に伝わる表現を工夫しているか。子どもたちの心のゆらぎについても丁寧にすくい取って書いているか。書きながら場面が浮かんでいるか。これは声に出して読むことで確認できるはずです。また力のある絵本作品をもっと読んで欲しいです。特にBグレードはストーリー性を考えて作った場合、たとえ幼年童話的であっても、読者対象を意識して書いてあれば、幼年童話の書き手としての資質や可能性を見出していくこともやぶさかではない。そういった話し合いが行われ、次回からは、これまでのようなシステムではなく、ご応募はAグレード1編とBグレード1編と、制限をつけることにしました。
それは絵本テキストを書くことをもっと大切にして欲しいからです。絵本テキストを書くことの意味。そして作家の登竜門であるこの「絵本テキスト大賞」に応募することの意味を考えていただき、命をかけて書く。他の誰にも書けない発想を生み出す。そうした意気込みでのぞんでいただきたいという願いからこうしたシステムにしました。
第12回も、新しい発想の作品をお待ちしております。

●主催 日本児童文学者協会/童心社
第11回「絵本テキスト大賞」選考委員
内田麟太郎、加藤純子、浜田桂子、大熊悟(童心社編集長)

第10回絵本テキスト大賞 
入選発表

日本児童文学者協会と童心社は、昨年に引き続き「第10回絵本テキスト大賞」の作品募集をいたしました。応募総数は昨年に続き1000編の大台を超え1073編(Aグレード461編・Bグレード612編)でした。たくさんのご応募をありがとうございました。応募作品は7月から8月末にかけて1次選考を行い、1次選考通過作品として、Aグレード19編。Bグレード29編を選びました。9月26日、童心社にて2次通過作品を選び、そこから最終選考に向けて議論いたしました。最終選考に残ったのは、Aグレードは「海をさがしに」(張山秀一)「ミンジュンジャンおじさんとシャップンヨーヤーウンおばさん」(柏木志津子)「おきにいりのしろいドレスをきてレストランにいきました」(渡辺朋)「それでもパパはおきません」(渡辺朋)の4編。Bグレードは「サバンナタクシー」(NOBU)「ひみつったらひみつ!」(あべしまこ)「イカあさん」(おおたけなおこ)「ゆきのなか」(井上昌幸)「森のせんたくやさん」(おち・亜衣)の5編でした。
議論の結果、下記の3作品を入選といたしました。大賞は童心社より出版されます。

グレード 受賞作品
大賞
「おきにいりのしろいドレスをきてレストランにいきました」 渡辺 朋
優秀作
「イカあさん」 おおたけなおこ
優秀作
「ひみつったらひみつ!」 あべしまこ

Aグレードの大賞を受賞した「おきにいりのしろいドレスをきてレストランにいきました」は、登場人物の連鎖する驚きの感情を擬音だけで描写した実験作。うまくいくと画期的な絵本になりそう。実験作ではあるが、この作者の作品が2次選考も含めるとA・B2つのグレードに3編も残ったということから絵本的発想のできる人なのではと大賞に決まった。Bグレードで優秀作に選ばれた「イカあさん」は、忙しいお母さんをイカに変身させるという発想がおもしろかった。「ひみつったらひみつ!」は、絵本としては難しいが、幼年童話の可能性を感じさせる作品であった。
今回Aグレードは、グレードを間違えて応募したのではと思わせるような作品が多かった。内容的な魅力から1次選考をくぐり抜けてはいるが、グレードにあった作品の応募を次回からは期待したい。
また、Bグレードにはとても評価の高かった作品があったのだが、以前新聞に掲載され、それを改稿したものという記述があり、賞という性格を考えると、すでに発表したことのある作品を入賞させるのは難しいという結論に至った。今後はこの点にご留意いただきたい。
来年も新しい形で「絵本テキスト大賞」を行います。どうぞ今からご準備ください。

●主催 日本児童文学者協会/童心社
第10回「絵本テキスト大賞」選考委員
内田麟太郎、加藤純子、浜田桂子、大熊悟(童心社編集長)

第9回絵本テキスト大賞 
入選発表

日本児童文学者協会と童心社は、昨年に引き続き「第9回絵本テキスト大賞」の作品募集をいたしました。今回の応募総数は過去に例を見ない 1096 編(A グレード480編・B グレード636編)でした。たくさんのご応募をありがとうございました。応募作品は7月から8月末にかけて一次選考を行い、一次選考通過作品として、A グレード 26 編。B グレード 31 編を選びました。9 月 29 日、童心社にて二次通過作品を選び、そこから最終選考に向けて議論いたしました。
最終選考に残ったのは、A グレードは「なんでもきんしのやま」(山下みゆき)、「ぶらんこぎいこ」(石本 湖)、「きかんしゃにのって ぼうけんにしゅっぱーつ」(おかなおこ)、「あさがきました おやすみなさい」(丸目 花)の4編。B グレードは「ブタちゃいますねん いぬですねん」(サイキキキ)、「ちこくのりゆう」(森くま堂)、「よる」(吉田星一)、「まえばちゃん」(川島えつこ)、「ひみつ」(NOBU)、「しずかに しずかに」(なかのゆき)の6編でした。議論の結果下記の5作品を入選といたしました。

グレード 受賞作品
大賞
「ぶらんこぎいこ」 石本 湖
優秀作
「なんでもきんしのやま」 山下みゆき
大賞
「ちこくのりゆう」 森くま堂
優秀作
「よる」 吉田星一
優秀作
「まえばちゃん」 川島えつこ

A グレードの大賞を受賞した「ぶらんこぎいこ」は、のびやかさがいい。次はどんな風景が来るかワクワクする。ただオチはもう一工夫欲しい。優秀作の「なんでもきんしのやま」は文章が多すぎる。けれど物語としての世界が立ち上がってくる。B グレードの大賞「ちこくのりゆう」は満場一致で決まった。とてもレベルが高い。いきなりカブトムシになるシーンは思わずカフカを思い浮かべた。優秀作の「よる」は夜に対する感覚がおもしろい。ただもう少し整理が必要。「まえばちゃん」には才能を感じる。幼年童話の方が向いている書き手ではないか。
今回は公募文には「もっとストーリー性」をということを明記しました。そのことで絵本テキストとしてのおもしろさはもちろん、幼年童話の資質まで類推できる結果となり、新しい才能を感じることのできる貴重な場となりました。来年も第10回の「絵本テキスト大賞」を行います。どうぞ今からご準備ください。

●主催 日本児童文学者協会/童心社
第9回「絵本テキスト大賞」選考委員
内田麟太郎、加藤純子、浜田桂子、大熊悟(童心社編集長)

第8回絵本テキスト大賞 
入選発表

日本児童文学者協会と童心社は、昨年に引き続き「第8回絵本テキスト大賞」の作品募集を致しました。今回の応募総数は178編(Aグレード69編Bグレード109編)でした。たくさんのご応募ありがとうございました。応募作品は、7月中旬から8月上旬にかけて予備審査を行い、一次選考通過作品としてAグレード15編、Bグレード26編を選びました。9月29日、童心社KamishibaiHallにて二次選考、最終選考会を開きました。
最終選考に残ったのはAグレード「ふたごのボタン」真山みな子、「トマトねこ」のはらさちこ、「ゆれないプリン」降幡うたた、「ツボをおしたら」高田由紀子の4編。Bグレードは「バスてい よいしょ」重松彌佐、「クリスマス・イブのおきゃくさま」後藤ひとみ、「どろだんごのまほう」中住千春の3編でした。厳選な審査の結果以下の4作品を入選と致しました。

グレード 受賞作品
大賞
該当作なし
優秀作
「ふたごのボタン」 真山みな子
優秀作
「トマトねこ」 のはらさちこ
大賞
「バスてい よいしょ」 重松彌佐
優秀作
「どろだんごのまほう」 中住千春

Aグレードの「ふたごのボタン」はボタンがボタン穴に出たり入ったりする画面のおもしろさがあり、「トマトねこ」はおしゃれなのだが、何か足りない。いずれも大きく編集者が手を加えなければ絵本にはならず、大賞にはとどかないことで優秀作としました。Bグレードの「バスてい よいしょ」は、バス停と矛盾をはらんだ登場人物の意外性が評価を集めました。優秀作とした「どろだんごのまほう」については、揺れる少女の未来が評価されました。
今回、選考していて、みなさん文章はうまいのですが、ことばが饒舌すぎること。絵本として、文章やキャラクターが立ち上がってくる作品が少ないと感じました。どうぞみなさま、もう少し絵本をイメージしたことばで、既成にとらわれることなく、もっと大胆にぶっ飛んで下さい。大賞作は、童心社より絵本として出版されます。「絵本テキスト大賞」は来年も第9回の作品募集を行います。詳細は本誌2016年1・2月号に掲載します。
みなさんからのたくさんの作品お待ちしています。

●主催 日本児童文学者協会/童心社
第8回「絵本テキスト大賞」選考委員
丘 修三、内田麟太郎、長谷川知子、橋口英二郎(童心社 副編集長)

第7回絵本テキスト大賞 
入選発表

日本児童文学者協会と童心社は、昨年に引き続き第7回絵本テキスト大賞」の作品募集をしました。応募総数は181編(Aグレード67編Bグレード114編)でした。
応募作品は、7月下旬から8月上旬にかけて予備審査を行い、一次選考通過作品Aグレード20編、Bグレード28編を選びました。
9月30日童心社Kamishibai Hallにて二次選考、最終選考会を開きました。最終審査に残ったのは、Aグレード〈「ごりらころがる」ひめのゆうだい、「マスク」福井智、「がまんできなーい」渡辺朋、「スプレールさん」鈴木まり子、「ちいちゃんのくつした」北山千尋〉の5編。Bグレード〈「いっしょに歌おう!」さとうあゆみ、「あむあむじいさん」真山みな子、「まちのパンや『かぶきや』さん」かねまつすみれ、「たたみうさぎ」きりん本〉の4編。厳選な審査の結果、以下の4作品を入選と決定しました。

グレード 受賞作品
大賞
「マスク」 福井 智
優秀作
「がまんできなーい」 渡辺 朋
大賞
「まちのパンや『かぶきや』さん」 かねまつすみれ
優秀作
「あむあむじいさん」 真山みな子

「マスク」はパンチの効いた対抗馬がなかったこともありますが、語りのオーソドックスさと、おもしろい絵本になる可能性を買って、全員一致でした。
「まちのパンや『かぶきや』さん」は「あむあむじいさん」と票を争いましたが、お店のパンが意表を突く展開のおもしろさを評価いたしました。
前作、前々作の絵本の発刊が遅れていますが、大賞受賞作は、童心社より絵本として出版されます。
たくさんのご応募、ありがとうございました。

●主催 日本児童文学者協会/童心社
第7回「絵本テキスト大賞」選考委員
丘 修三、内田麟太郎、長谷川知子、橋口英二郎(童心社 副編集長)

第6回絵本テキスト大賞 
入選発表

日本児童文学者協会と童心社は、昨年に引き続き第6回「絵本テキスト大賞」の作品募集を行いました。応募総数は283編(Aグレード103編、Bグレード180編)。昨年にも増して、大変多くの作品が寄せられました。応募作品は8月下旬から9月上旬にかけて予備審査を行い、1次選考通過作品Aグレード14編。Bグレード19編を選びました。9月26日に最終選考会を開き、以下の3作品の入選を決定しました。大賞受賞作は童心社から絵本として出版されます。

グレード 受賞作品
大賞
該当作なし
優秀作
「バッタとった」 松田幸子
大賞
「おかお おかお おかおだよ」 スマ
優秀作
「くものモーリー」 降幡うたた

今回283編の様々な形、表現のみなさまの作品を読ませていただいて、改めて、絵本テキストとは何か、考えさせられた選考でした。
たくさんのご応募、ありがとうございました。

●主催 日本児童文学者協会/童心社
第6回「絵本テキスト大賞」選考委員
丘 修三、内田麟太郎、長谷川知子、下園昌彦(童心社編集長)