スペシャルインタビュー

『わたり鳥』著者
絵本作家・鈴木まもるさん

前作『ウミガメものがたり』につづき、新刊絵本『わたり鳥』を刊行された鈴木まもるさん。鈴木さんは、鳥の巣についての研究、著作でも広く知られています。

絵本作家 鈴木まもるさん

わたり鳥(鈴木まもる 作・絵)『わたり鳥』(鈴木まもる 作・絵)

-今回、わたり鳥をテーマにされたきっかけはなんだったんでしょうか?

日本だとわたり鳥は、ツバメさんや白鳥さんだけと思われているけれど、もっとたくさんの鳥が、それこそ何十億羽が世界中をわたっています。

日本ではわたり鳥を「夏鳥」「冬鳥」「旅鳥」と区分したりします。「ツバメさんは南から、巣作りのために夏に日本にやってくる」「北から来た白鳥さんは寒いのを避けるため冬にやってくる」と、それぞれが違うものと理解されてしまっています。僕も最初「旅鳥」って何だろうと思いましたが、シベリアなど北から来て東南アジアで巣作りをするために日本を通過する鳥は「旅鳥」と呼ばれているのです。まるで旅してフラフラしている鳥みたいな名前ですけれど、やってることは同じで、新しい生命を生み育てるための行動なんですね。

わたり鳥とそうじゃない鳥の違いをよく聞かれますが、「わたる」「わたらない」ではなくて、巣作りのための移動の距離が、短いか長いかの違いだけなんです。スズメさんだって、巣作りをするし、里から山へ短いわたりを行う鳥もたくさんいます。つまり、新しい生命を生み育てるための行動なんです。そういう意味で、今まで僕がやってきた「鳥の巣」と、鳥の「わたり」は、必然的につながっているんです。

今回の絵本では、そうした「わたり」を、鳥たちに共通の行動として提示したいと考えて作りました。

-この作品ではどんな「わたり鳥」たちを取り上げているのでしょうか。

ツバメなど、日本の読者に身近な鳥たちからはじめ、世界とのつながりが読者に伝わりやすいよう、徐々に世界の鳥へ視点を広げていきます。高いヒマラヤを越えてわたる鳥だったり、北極から南極へ長い距離をわたる鳥だったり、わたりが、世界規模で行われていることがわかるように紹介しています。

さまざまなわたり鳥

-絵本では、大きさも比較されて描かれているので、「こんな小さな鳥でもわたりができるんだな」と、わたりを行う鳥たちが、大きさや種類もさまざまであることがよくわかります。

最近は、わたりをする鳥の中でも、ハチクマみたいな大きな猛禽類なら、小型のGPSを積んで計測することで、どのようなルートを通っているのか、研究が進んできています。しかしもっと小さな鳥たちがどんなところを通ってきているのか、詳しくはわかっていません。でも、ちゃんとわたっているんですよね。なぜ小さな鳥たちが、そんなに長い距離を正しい方角を知って飛ぶことができるのか。星の位置や太陽の向きなどから知ることができるのだろうといわれますが、正確なことはわかっていません。

でも現実に、鳥たちにはそうした不思議な力があって、毎年わたっている。それは、やっぱり僕自身も不思議だし、読む人にもそうした不思議さを感じてほしいですね。それは前作の『ウミガメものがたり』も同じです。人間が知らない不思議な力が動物たちにはあって、生きて行動している。その不思議さを感じてほしいです。

ウミガメものがたり(鈴木まもる 作・絵)『ウミガメものがたり』(鈴木まもる 作・絵)

「また、同じようにヒトも生物として、そういった力があるんだと思うんです。この本を読む子どもたちだって、日本にずっと住む人もいるだろうし、どこか海外に行って暮らす人もいるでしょう。それはきっとわたり鳥の行動と同じなんじゃないでしょうか。この絵本では、科学的な部分はきちんと押さえていますが、理科的・知識的なことだけじゃなくて、絵本として、夢やロマン、“生きる”というところへつながるものを感じてほしいという思いを込めました。

-鳥だけじゃなくて、人間もそうなんですね……。私も地方出身なんですが、生き物として他の所に出て行きたいという気持ちがあるのは、よくわかります。

人間の場合には、理由は人それぞれだし、移動する場合にも鳥たちのように毎年おこなうわけではないけれど、もっと根源的な気持ちの部分は同じなんじゃないでしょうか。生き物としては、分散したいとか、種の保存ということもあるんだと思います。

うみをわたるツバメたち

-絵本の鳥たちが飛んでる絵に、鳥たちの意思や思いを感じました。飛びたいと思って飛び、身を切る風の冷たさや、空の風に身をまかせる心地よさみたいなものを……。鈴木さんが鳥たちの気持ちに共感して描かれているのだろうなと、その気持ちが伝わってきます。

みんなが鳥を好きなのは、やっぱり自由に空を飛べるからなんですよね。自由に空を飛ぶってことは人間にはできないことだから。人間がどうしても現実的な暮らしの中で、何かに属したり、いろんなものに関わらざるをえないのに対して、鳥が自由に空を飛ぶ姿っていうのは、見ていて気持ちがいいですよね。だからみんな惹かれるんじゃないかなと思います。飛ぶということが新しい未知の世界を感じさせ、それが新しい命を生み育てることまで連想させるのではないでしょうか。鳥の中には飛ばない鳥もいますけど、それは表面的な違いであって、新しい生命を生み育てるということでは、すべての生き物が共通して持っている本能ではないでしょうか。それは鳥もウミガメも同じだし、人間も同じなんじゃないですかね。

-この絵本に流れる、鳥たち、動物たちへの思いが、きっとこれを読む子どもたちにも届くのではないかと思います。今日はお話ありがとうございました。

絵本作家・鈴木まもるさん

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