童心社の絵本

にしきのなかの馬

やえがしなおこ 作/つかさおさむ

むかし。あやのもとに、一頭の子馬がやってきました。ふたりはいつも一緒に過ごしていたけれど、ある日突然、離ればなれに。あやは馬を探すことを決意します。すると夢の中で……。やえがしなおこによる本格創作民話。東北の村を舞台に、馬と少女のはかない愛の物語。物語全体が悲しみの雰囲気に包まれている中、一途に生きようとする主人公〈あや〉を、司修が幻想的にしかし力強く描き出す。

  • 定価1,870円 (本体1,700円+税10%)
  • 初版:2015年3月10日
  • 判型:B5変型ワイド判/サイズ:25.1×25.6cm
  • 頁数:32頁
  • 4・5歳~
  • ISBN:978-4-494-01546-7
  • NDC:913

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内容説明

むかし。あやのもとに、一頭の子馬がやってきました。ふたりはいつも一緒に過ごしていたけれど、ある日突然、離ればなれに。あやは馬を探すことを決意します。すると夢の中で……。やえがしなおこによる本格創作民話。東北の村を舞台に、馬と少女のはかない愛の物語。物語全体が悲しみの雰囲気に包まれている中、一途に生きようとする主人公〈あや〉を、司修が幻想的にしかし力強く描き出す。

推薦のことば

すべてを越えて成就した愛(母のひろば611号) 2015年5月14日
 はるかな昔から、都の人たちが東北にもとめたものに「金」と「馬」があります。「金」は建立される大仏のために、「馬」は戦に不可欠な武具のひとつとしてもとめられたのでした。
 いい馬を産した東北では、馬との強い繋がりをしめす体験談が、いまもよく語られます。ある老媼は、「だれよりも馬をたよりに生きてきた」と、その人生を語り、「馬はおれの命だった」ともいわれました。
 一方、伝説として古く岩手県に伝わる「おしらさま」は、馬と娘の叶わぬ愛を語っています。馬とともに昇天した娘は、我が身の親不孝を詫びて、蚕をもたらしたと語られ、いまでも養蚕の守り神として祀られています。
 絵本「にしきのなかの馬」は、娘と馬、引き裂かれる愛、糸を染め布を織る営み、戦いに引き出される馬の悲劇など、東北における馬と人との長い歴史のエッセンスをゆたかに汲み上げて、新しい物語をつくり上げています。それは、引き裂かれた悲しみというよりは、すべてを越えて成就した愛の姿として、未来への希望さえ読後に残してくれます。その物語に実在感をあたえるべく用意されたのは、空間を切りつけるように、しかし、どこまでもやさしく、色ゆたかに描かれた絵です。ツツジが美しい。
 文と絵が相まって、抱きしめたいようないい絵本になっています。
小野和子(おの かずこ/民話採訪者)