この4月に刊行5周年を迎えた『うまれてきてくれてありがとう』。
日々多くのお母さんお父さんからの共感の声が届く絵本です。
今回は作者のにしもとようさんをお迎えして、お話をうかがいました。
−2011年の刊行以来、版を重ねている『うまれてきてくれてありがとう』ですが、このお話を書いたいきさつについてうかがえますか。
息子の誕生が、お話を書くきっかけになりました。結婚から5年ほど経ちあきらめかけていたころ、妻の妊娠が発覚しました。
ところが妊娠してからが大変だったのです。出産までの間、妻はほとんど入院していました。
私は毎日神社にお参りをして、妻のお見舞いをして…。「妻のよいところ100選」を言葉とイラストで書いて贈ったりもしました。
結果的には、妊娠9ヶ月で無事に息子は生まれました。本当にほっとしたのを覚えています。
−奥様にとっても、にしもとさんにとっても生まれてくるまでが長くて大変だったのですね。
息子が生まれて、心から「うまれてきてくれてありがとう」と思ったのです。
そして、その気持ちを何かの形で残したいと思いました。
息子へのプレゼントですね。
そうして書いたのが、このお話です。
−生まれる前のあかちゃんがママを探す、という内容ですが、このストーリーはどのように考えられたのですか?
妊婦健診のとき、心音を確認している看護師さんが妻に言ったのです。
「心音がとてもしっかりしている、元気なあかちゃんだ。あなたの子どもで生まれたいのね。」と。
そのときに、「この子が妻をママとして選んだのだ」と強く思ったのです。自分でママを選んだから、この子は今も頑張っているのだ、それを心音で伝えているのだと。
それで、生まれる前のあかちゃんを主人公にしました。
−お話ができあがって、本になるまでは数年かかっているのですね。
はじめは、自作の紙しばいにして、友人たちに見せたりしていました。
縁あって童心社から絵本として出版することになり、絵を黒井健さんが描かれると聞いたときには、本当に驚きました。
−実際に絵本になってご覧になったとき、どんなお気持ちでしたか?
感激、という言葉しかありません。
本ができあがったのが息子が幼稚園を卒園するころで、ぴったりの卒園プレゼントになりました。
−刊行後の反響はいかがでしたか?
思っていた以上にたくさんの方が読んでくださって、感謝しています。
読んでくださる方それぞれの「うまれてきてくれてありがとう」があるのだと感じます。
私自身、ときどき読み返すこともありますが、そのたびに息子が生まれてからのことを思い出しています。
−今はどんなお父さんですか?
息子は今年小学校6年生になりました。
もっとゆっくり成長してくれてもいいのに…と手がかからなくなった寂しさも感じています。
叱ることもよくありますが、それも生まれてきてくれたからこそ、と感謝しています。
−日常の中に、「うまれてきてくれてありがとう」があるのですね。
本日はありがとうございました。
実際にお話をうかがっていると、にしもとさんのお子様、そして奥様への深い愛情が伝わってきました。
一人のお父さんの愛が絵本の中につまっているのだと改めて感じます。
親子で一緒に読むことが、気持ちを伝えあう大切なひとときになる、そんな1冊です。