みなさんへメッセージ14ひきの作者より

14ひきのシリーズとわたし いわむらかずお

14ひきのシリーズとわたし
いわむらかずお

 「雑木林のなかの家族の情景」、それが自分にとっての「原風景」だと気づいたのは、30歳を過ぎたころでした。同時に、わたしのなかにイメージの世界が広がり、絵本が描きたくてたまらなくなりました。
 わたしは、そのイメージの世界と暮らしの場を近づけるため、東京から栃木県の益子町に移り住みました。そして、「原風景」のうえに、自然のなかでの家族との暮らしを重ねながら、構想を練っていきました。『14ひきのひっこし』『14ひきのあさごはん』、2冊の絵本ができあがりシリーズがはじまったのは、益子への引っ越しから8年がたったときでした。
 それから30年、シリーズは『14ひきのもちつき』で12作になり、日本はもちろん、フランス、ドイツ、台湾、韓国など、多くの国の人びとに愛される絵本になりました。読者は成長し、子から孫へと読み継がれています。
 「家族」と「自然」、それは、国や時代を超えて、わたしたちに生きるよろこびを与えてくれる、心の拠り所です。2011年3月、大震災と原発事故を体験し、わたしは、そのことをさらに強く感じています。『14ひきのシリーズ』で描きつづけてきた、「自然の恵みに感謝し、家族とともにつつましく暮らすこと」、いま取り戻すべき大切なことのひとつだと思うのです。

作者:いわむらかずお

いわむら かずおプロフィール

1939年東京生まれ。東京芸術大学工芸科卒。栃木県益子町在住。主な作品に『14ひきのあさごはん』(絵本にっぽん賞)など「14ひき」シリーズ、エリック・カールとの合作絵本『どこへいくの?To See My Friend!』(童心社)、『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』(偕成社/サンケイ児童出版文化賞)、『かんがえるカエルくん』(福音館書店/講談社出版文化賞受賞)、「トガリ山のぼうけん」シリーズ、「ゆうひの丘のなかま」シリーズ(理論社)などがある。1998年栃木県馬頭町(現・那珂川町)に「いわむらかずお絵本の丘美術館」を開館、絵本・自然・子どもをテーマに活動を続けている。

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いわむらかずお絵本の丘美術館