2020.06.22

〈いま、読みたい絵本〉終戦75周年・慰霊の日を前に『やんばるの少年』

終戦から75年となる今年、6月23日の「沖縄慰霊の日」がやってきます。
「沖縄慰霊の日」は、国内で唯一地上戦が行われ、4人に1人が亡くなったといわれる沖縄で、平和を祈る日です。

今日は、沖縄県北部のやんばるの森を舞台にした絵本『やんばるの少年』をご紹介します。
この本は、ロングセラー絵本『じごくのそうべえ』 で知られる作者・田島征彦さんによる、昨年刊行された絵本です。

主人公の”ぼく”は、やんばるの森に暮らす、小学4年生。
世界でここにしかいない生き物も暮らすこの森で、弟のげんた、おじいと暮らしている幼なじみの同級生ハルコと、いつも一緒にあそんでいます。

今日は、村の寄り合いがあって、大人たちは遅くまで帰ってきません。
森の木を切り倒し、オスプレイが発着するヘリパッドが作られることになったのです。

「あんなものがとびまわったら、おそろしくて生活ができんよ」
13歳で兵隊にされて、この森でたたかった、ハルコのおじいも怒っています。

オスプレイってなんだろう……。

しかし、大人たちの反対もむなしく、ヘリパッドの建設はすすみ、”ぼく”の暮らしが変わっていきます。
そして、幼なじみのハルコが、おじいと一緒に、遠くへひっこしていくことになって……。

沖縄県北部の東村高江村に住むある家族を取材し創作したという本作。
田島さんが子供の頃体験したのと同じ、自然の中ですごす楽しさ、そして、沖縄で貴重な自然が破壊されつつあることを、幼い子どもたちにも知ってほしいとの願いから、本作は制作されました。

舞台となった沖縄県北部東村高江では、今もヘリパッドの建設と、建設に反対する運動も続いています。
沖縄戦から地続きにある今の日本を描いたこの絵本。
「沖縄慰霊の日」を前に、ぜひ日本全国の子どもたちと読んでいただきたい絵本です。

40ページ/小学校低学年~
(たじまゆきひこ・作)


どうぞ、こちらのこの本についての著者インタビューもあわせてご覧ください。
▶︎インタビュー『やんばるの少年』たじまゆきひこさん
https://www.doshinsha.co.jp/news/detail.php?id=1539

▶︎『やんばるの少年』は本年度の西日本読書感想画コンクールの選定図書に選ばれています。
https://specials.nishinippon.co.jp/cp/kansoga/
やんばるの少年

童心社の絵本

やんばるの少年

たじまゆきひこ

沖縄県やんばるの森には、ここにしかいない鳥や虫などがたくさんいます。ぼくと弟げんたと、友達のハルコは、川でうなぎをとったり、バンシルーの木にのぼって実を食べたりする仲良し。そんなある日、オスプレイのヘリパッド建設が始まって、森の木すれすれにオスプレイが滑空するようになりました。ハルコの家族は、引っ越すことになって…。
森に暮らす子どもの視点から、静かで安全な暮らしを奪われる不条理さを描いた力作。

  • 小学3・4年~
  • 2019年5月20日初版
  • 定価1,760円 (本体1,600円+税10%)
  • 立ち読み