2020.01.16

<連載1/2『のせてのせて』『おさじさん』50周年記念> 画家・東光寺啓さんの素顔を訪ねて

ロングセラー絵本『のせてのせて』(累計148万部)と『おさじさん』(累計111万部)は、おかげさまで昨年、刊行から50周年を迎えました。

2作はともに、日本で一番多くの人に読まれている絵本『いないいないばあ』(累計682万部)と同じ「松谷みよ子あかちゃんの本」(全9冊)のシリーズの作品。そして絵はいずれも画家・東光寺啓さんによるものです。

当時を知る関係者がいずれも他界されている中、どのように2冊の絵本が描かれたのか、東光寺啓さんのご家族を訪ね、お話を伺いました。また絵本の著作がほとんどなかったという画家・東光寺啓さんの画家としての人生の歩みも教えて頂きました。


画家・東光寺啓さん



●幼少・青年期
東光寺啓さんの生家は織物問屋で、学校に人力車で通学するなど裕福な幼少期を過ごしました。また青年期にかけて、東光寺さんはほぼ独学で絵画技法を学んだそうです。


●小説家・永井荷風との親交
30歳前後、1945年〜1950年頃に、東光寺さんは作家・永井荷風と親交を深め、行動をともにするようになります。
この少し前から東光寺さんは永井荷風が連載する雑誌小説の挿絵を多く手がけるようになり、画家のペンネーム「東光寺啓」を名乗るようになります。
永井荷風の日記でもある『断腸亭日乗』にも、この頃東光寺さんの名前が登場しています。


『摘録 断腸亭日乗』 (岩波書店) 



●絵画のジャンルを越えて
東光寺さんは30代半ば、1950年前後に、生涯にわたっての師となる現代美術家・斎藤義重と出会い、師事するようになります。斎藤義重は、グッゲンハイム国際美術展 優秀賞、国際美術評論家連盟賞など、世界的に高い評価を受けている現代美術家です。斎藤義重に抽象画の技法を学びながら、東光寺さんは自身の作品として抽象画の製作を多く行っています。
東光寺さんと師・斎藤義重との交友は生涯にわたって続くことになります。

東光寺さんの抽象画作品。自身の作品としてはこうした抽象画が中心だったという。



一方、挿絵の仕事では、1950年〜60年代にかけて、旺⽂社の雑誌「中学時代」「高校時代」、朝⽇新聞社の「文芸朝日」、人物往来社の「人物往来」など多くの雑誌の挿絵を手がけてます。なかでも、新潮社「小説新潮」などの時代小説の挿絵、書籍カバーの表紙なども多く手がけました。
特に多かったのは時代小説の挿絵。毎週連載小説の原稿が届く中、東光寺さんは自身では読まず、当時下宿していた書生さんに原稿を音読させながら、黒1色の筆を使い、次々に絵を仕上げていたそうです。

時代や文化を問わず、多彩に描き分けられた東光寺さんのモノクロのイラスト



連載2/2へつづく

*イラストはいずれも『創作カット画集』(東光寺啓・幸寿共著)東明社刊 1963年より
おさじさん

松谷みよ子 あかちゃんの本

おさじさん

松谷みよ子 ぶん/東光寺啓

おいしいにおいにさそわれて、うさぎのぼうやのところに、おさじさんがやってきました。
うさぎのぼうやは、とろとろあつあつのおかゆを食べようとしますが、おかゆに鼻をつっこんでしまい、「あっちっち」「えーんえーん」。
でもだいじょうぶ。おさじさんがお手伝いします。

おくちの トンネル
アアーンと あいて
おさじさんは はこびます
たまごの おかゆを
はこびます
ポッポー

「ああ おいしい」とうさぎさんは笑顔になりました。

離乳食を食べはじめたあかちゃんとお母さんお父さんにとって、おさじさんは身近な存在。
絵本でおさじさんと仲よしになると、ごはんの時間も楽しくなりますね。

離乳食をはじめる頃からおすすめしたい、110万部をこえるロングセラーあかちゃん絵本です。

  • 0・1歳~
  • 1969年8月31日初版
  • 定価770円 (本体700円+税10%)
  • 立ち読み
のせてのせて

松谷みよ子 あかちゃんの本

のせてのせて

松谷みよ子 ぶん/東光寺啓

まこちゃんの じどうしゃです 
はしりますよ ブブー
ストップ!
のせて のせて
ウサギが てを あげて います

まこちゃんのじどうしゃは、うさぎをのせてはしります。クマや、ネズミの家族など、だんだんと増えていくおともだち。そして、みんなののったじどうしゃはトンネルにはいって……。

「ストップ!」「のせてのせて」のくり返しが楽しく、まこちゃんと一緒に車にのっていくような、心地いいスピード感が味わえます。
トンネルの場面は一転してまっくらな画面に。
ここであかちゃんは少し不安な気持ちになりますが、遠くに見える明るい出口に導かれ、ページをめくると「でた!おひさまだ!」。ハラハラドキドキがつまった展開です。

動物や車に興味をもちはじめたあかちゃんにぴったり。
140万部をこえるロングセラーあかちゃん絵本。

  • 0・1歳~
  • 1969年7月5日初版
  • 定価770円 (本体700円+税10%)
  • 立ち読み
いないいないばあ

松谷みよ子 あかちゃんの本

いないいないばあ

松谷みよ子 ぶん/瀬川康男

日本の絵本ではじめて! 累計700万部を突破
1967年の刊行から、半世紀あまり。
2020年には日本の絵本で初めて700万部を突破し、現在735万部を超えるロングセラー絵本となっています。(※1)
世代を超えて読みつがれる、「人生で初めて出会う一冊」です。
※1…株式会社トーハン発行「ミリオンぶっく 2023」調べ

あかちゃんに語りかける言葉
あかちゃんと目があう絵

「いないいないばあ にゃあにゃが ほらほら いないいない……」
『いないいないばあ』の文章は、作者の松谷みよ子さんが子育ての中でわが子に語りかけていた言葉がもとになっています。

画家の瀬川康男さんは、あかちゃんと向き合い試作を重ねました。
「ばあ」の場面の動物たちは、あかちゃんと目があうように描かれています。

あかちゃんと一緒に読むと、言葉と絵がひとつになり、臨場感をもっておひざの上のあかちゃんに伝わります。

  • 0・1歳~
  • 1967年4月15日初版
  • 定価770円 (本体700円+税10%)
  • 立ち読み
松谷みよ子 あかちゃんの本

松谷みよ子 あかちゃんの本

松谷みよ子 ぶん/瀬川康男、他

日本で初めてのあかちゃん絵本として出版されて40年以上、世代を超えて読みつがれ、たくさんのあかちゃんとおかあさんを笑顔にしてきたロングセラー絵本シリーズ。『いないいないばあ』『いいおかお』他、全9巻の美麗ケース付き。

  • 0・1歳~
  • 初版
  • 揃定価7,040円 (本体6,400円+税10%)
  • 立ち読み
  • 在庫僅少