2019.11.14

<連載>アニバーサリーおめでとう!『14ひきのこもりうた』

あたたかいお風呂がうれしい季節になってきました。
今日ご紹介するのは、はじめて14ひきのお風呂が登場した作品、『14ひきのこもりうた』です。
今年、おかげさまで25周年をむかえました。

この作品で描かれるのは、夕方から眠るまでの14ひきの営みです。
今日のゆうごはん、きのめのシチューの準備が進む中、子どもたちは順番にお風呂に入ります。ゆうごはんを家族みんなで食べたあと、今日のできごとを語りあいます。みんなの楽しかったこと、驚いたことを聞くのも楽しいひとときです。

眠りにつく前、子どもたちはお母さんに本を読んでもらいます。
ゆったりした気持ちになったところで、お母さん、おばあさんがこもりうたを歌ってくれました……。

この作品の制作中、実は著者のいわむらかずおさんご自身もお風呂を作っていました。
自宅のお風呂の改築中困らないようにと、庭に風呂小屋を作ることにしたのです。当時のことをこんなふうに綴っています。

「ぼくはまず大工さんに、『こんなお風呂にしたい』と『14ひきのこもりうた』のお風呂場の下絵を見せました。若い大工さんは『こんな風呂場を作るのは初めてだ』と面白がり、年寄りの大工さんは、『おらたちの若いころはみんなこんな風呂だったよ』となつかしがりました。
ぼくは絵本に合わせて風呂場の図面を直したり、風呂場に合わせて絵本の下絵を直したりしました。やがて風呂場は完成し、『14ひきのこもりうた』もできあがりました。
(中略)今、ぼくはこのお風呂がとても気に入っています。(中略)少しずつ夜の寒気が入ってくる風呂場で、遠くの夕焼けを見ていると、野ネズミの気分になってくるのです。」
(『母のひろば』364号 (1994年9月15日童心社発行)より抜粋)

14ひきのお風呂場も、夕方から夜にかけて差し込む光や空気が刻々と変わっていく様子が描かれています。

自然と一緒に、家族と一緒に生きる14ひき。
毎日くり返される、お風呂やゆうごはん、眠る前の1冊の本の中にこそ、確かな幸せがあることを教えてくれる作品です。

(いわむらかずお さく)

14ひきのこもりうた

14ひきのシリーズ

14ひきのこもりうた

いわむらかずお さく

夕日がさして影が長くなり、森へたきぎを拾いにいっていたお父さんたちが帰ってきました。
今日のゆうごはん、きのめのシチューのいいにおいが漂ってきたころ、子どもたちは順番にお風呂に入ります。

小さなヨットを浮かべたり、おじいさんの背中を流したり、みんなで楽しくおふろであたたまったら、家族そろって楽しいゆうごはんです。

ごはんの後はみんなで、今日のできごとを語りあいます。眠りにつく前、子どもたちはお母さんに本を読んでもらいます。ゆったりした気持ちになったところで、お母さん、おばあさんがこもりうたを歌ってくれます。

「ねむねむ どんぐり そら みあげ
 ねむねむ いもむし ゆめを みる。
 おやすみ おほしさん とおろりろ……。」


夕方から眠るまでの14ひきたちのいとなみを描いた、人気ロングセラーシリーズの第9作。

なんとも心地よさそうな14ひきたちのお風呂場の場面では、3場面にわたって夕方から夜にかけて差し込む光や空気が刻々と変わっていく様子が描かれています。毎日くり返される、お風呂やゆうごはん、眠る前の1冊の本の中にこそ、確かな幸せがあることを教えてくれる作品です。

  • 3歳~
  • 1994年7月10日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 立ち読み