2018.04.26

スペシャルインタビュー 『めしくわぬにょうぼう』 画家・飯野和好さん

“お化け”が登場する“行事”に関する民話・昔話を集めた絵本「おばけ・行事えほん」シリーズ。
第4巻となる『めしくわぬにょうぼう』(常光 徹 文/飯野和好 絵)の刊行を記念し、絵を描かれた飯野和好さんに、この作品についてお話をうかがいました。





—飯野さんは、童心社でも『妖怪図鑑』『妖怪絵巻』『あたしゆきおんな』『わがはいはのっぺらぼう』など、多く妖怪の絵本を描かれています。

今回の『めしくわぬにょうぼう』の山姥(やまんば)は、ぞくっとするような迫力のある絵です。
山姥(やまんば)は、絵本でも様々な姿に描かれていますが、今回の『めしくわぬにょうぼう』では、どんなことを意識されて描かれたのでしょう?


このお話は「食わず女房」として知られているお話で、絵本や紙芝居にもなっている作品です。中には山姥(やまんば)が、最後、蛇の姿になったりする話もあるんですよね。人を食う鬼を「鬼一口」(おにひとくち)といったりしますが、今回の作品の山姥(やまんば)は、鬼に近い形相の、人を食う女の姿をした妖怪です。

でも、妖怪もなかなか大変で(笑)、妖怪って、ただそのまま妖怪なんじゃなく、何かの前身があって、妖怪変化になって人を食ったりするようになるって見方があるんですよね。
だから妖怪は、みんなどこかに悲しみを持っている。幽霊もそうなんですが、かならず悲しみや背負ってるものがあるんですよね。
でも人と関わると、どうしても性(さが)のようなものが出て、禁をおかしたものは襲って食ってしまう。この本の場合には、男が、見てはいけないものを見てしまって食われそうになってしまいます。

—山姥(やまんば)は恐ろしい存在である一方で、人間の姿の時は、女性らしさ、美しさ、色気のようなものも感じます。
この場面でも、頭の口でにぎりめしを食べている恐ろしい姿から、次のページでは髪を結わった美しい女に戻っていますね。



人をひきつける魅力として、女性としての美しさ、怪しさも持っている。
ぞくっとするような美しさの中に、怖さがひそんでいる。
本人も山姥(やまんば)の醜い姿になりたい訳ではなく、できるだけこうした美しい姿でいたいんですよね。ところが、どうしようもなく、わ〜っと衝動にかられて、こうした姿になってしまうんですよね。

描くときに、リアルに自分でその場で見ているように、自分だったらどう感じてどうするか、体験しているように描いています。

—農作業の様子や舞台となる家の作りなど、農家の暮らしがとてもリアルです。飯野さんはご実家が秩父の農家とうかがいました。


絵本の文章では農家とは書いてないんですが、「山へいく」と書いている。庄屋さんの家ではないので、野良仕事に行くような男だろうと。それと山姥(やまんば)が出てくる話なので、景色も岩が多い山を描いています。秩父も岩山が多い所ですが、岩山が多い所は畑も石がゴロゴロしていますね。



この土間と囲炉裏のある場面の部屋の作りはほぼ実家と同じですね。実家では、土間との間に障子の仕切りがあって、奥には餅をつく臼が置いてありました。
ここにはしごがありますけど、これで2階にあがったんです。

男が2階から下をのぞいて、嫁が山姥(やまんば)だと知る場面が出てきますが、体験に基づいて描かれていたんですね。


子どもの時は2階が怖かったです。暗くていろんなものが置いてあって。(笑)
できるだけ見ている人に実感が伝わるように描いています。

表紙は、おとなしい人間の姿の女房が描かれています。
中を一度読むと、この同じ絵が、また違って見えてきますね。


おとなしく見える女性も怖いことがあるよね(笑)。



この表紙の時は、男の方は「かわいいな」なんて思って見ているんだよね。一方の山姥(やまんば)は嫁になって家に入り込みたいと、おとなしくしているんだけれど、目は光っている。

—嫁をもらおうとしている男の視線と、山姥(やまんば)の視線が交差する表紙なんですね。その場にいるような臨場感を感じる表紙です。


それと、ここで山姥(やまんば)は「めし食いません」ってことで、証としてひもで箸を結んでるんだよね。武士が絶対に刀を抜かないって誓いを立てるときに刀の鍔(つば)の所を紐で結んで誓いを立てるんだけど、そんなのをちょっと思い出してね。そんなことを知ってる、ちょっと洒落た山姥(やまんば)なんだよね(笑)。

—登場人物たちの心情や、くらしのリアリティなど、まさに飯野さんではないと描けない絵本ですね。
今日はお話ありがとうございました。

めしくわぬにょうぼう

おばけ・行事えほん

めしくわぬにょうぼう

常光徹 文/飯野和好

村一ばんのけちで、とんでもないよくばりの男がいた。そこに、うつくしい娘が、ひょっこりたずねてきた。
なんと娘は、めしをくわぬという。男はすぐに娘を家にいれた。娘は朝から晩までよく働いた。
しかしどうしたことか、米びつの米がどんどん減っていく。あやしむ男が、出かけるふりをしてこっそり見はっていると、にょうぼうが、にかにかとわらいながら、大釜いっぱいのめしをたきあげて……。
端午の節供と山姥のお話。

  • 4・5歳~
  • 2018年5月1日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 立ち読み
あたし ゆきおんな

絵本・こどものひろば

あたし ゆきおんな

富安陽子 文/飯野和好

北風が山をふきぬけ…白い影がふわりとたなびくと、ほうら、ゆきおんなが生まれるんだよ。冷たいひとみは青く輝き、唇は雪にさくさざんかみたいに赤い。ゆらゆらと音もなく、闇の中を一人で行くんだよ。ある夜…。

  • 4・5歳~
  • 2012年11月20日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 立ち読み
わがはいはのっぺらぼう

絵本・こどものひろば

わがはいはのっぺらぼう

富安陽子 文/飯野和好

のっぺらぼうの朝はきゅうりのパックで始まります。何せつるつるの肌が命ですから。メイクでとびきり美人に変身したら、夕闇の町にくり出します。人間を驚かすのが、のっぺらぼうの仕事。くらーい四つ辻で待ち構えて、通りかかった人間に向かって「バア!」と飛び出すと……「ギャー!」!?

  • 3歳~
  • 2011年10月25日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 在庫品切・重版未定
妖怪絵巻

単行本絵本

妖怪絵巻

常光徹 文/飯野和好

大晦日や節分の夜に、妖怪たちが歩き回る、百鬼夜行のイメージを現代によみがえらせた絵本です。

  • 3歳~
  • 1997年6月5日初版
  • 定価1,430円 (本体1,300円+税10%)
  • 在庫品切・重版未定
妖怪図鑑

単行本絵本

妖怪図鑑

常光徹 文/飯野和好

河童や鬼など代表的な妖怪を詳しく解説。さらに、豆知識、民話のページなどもある妖怪絵本の決定版。

  • 3歳~
  • 1994年12月5日初版
  • 定価1,760円 (本体1,600円+税10%)